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箱根宮ノ下に、いかにも美しい自然の中で育まれたと思われる“雅”な和菓子の老舗がある。古くから湯治場として有名な箱根温泉に逗留した、多くの人達に親しまれた和菓子の味をゆっくりと味わいたい。
三波:和菓子一筋でやってこられたそうですが、老舗店の歴史からおうかがいしましょう。
白井:かれこれ50年ほどになりますか。父の代には新橋に店を持っていまして、最盛期には40人程の従業員を抱えていたそうです。途中戦争になったため、父の出身地でもあるこの“宮ノ下”に戻って店を構えました。
三波:50年ですかぁ、いろいろとご苦労もあったんじゃないですか。
白井:はじめは物のない時代でしたから、ヤミで砂糖や小豆を買い集めましてね。当時は甘味剤としてサッカリンがたくさん使用されていたんですが、私達はかたくなに砂糖の味を守りました。
三波:そう言ったこだわりの積み重ねが、今日まで続く根強い人気を作り上げてきたんでしょうね。
白井:現在は、白砂糖ではなく“ざらめ糖”を使用しています。一割程高くつきますが、炊き上げた餡(あん)には灰汁(あく)が無くて、奥深い甘味とでも言いましょうか、いわゆる風味が出るんですよ。やわらかく喉を通る甘味がね。
三波:いやぁ、お話を聞いているだけでおなかがなってしまいますが…。さて、そもそもお菓子と言うのはそれで命を繋いでいくのではなく、食べて人生の余裕とか喜びなどを味わうものですよね。そういった意味では、お菓子作りには、やはりある程度の遊び心があったほうが良いんでしょうね。
白井:えぇ、その通りです。包装にも少なからずその要素が含まれていないと、どうしても堅いものになってしまいますから。
三波:それにしてもこちらに置かれているお菓子は、ついつい手に取って開けてみたくなりますねぇ。今は何種類のお菓子があるんですか。
白井:大きく分けて5種類です。では、お一つどうぞ。因みにこの『森のお福』に入っているあんこは小豆の皮を取ってあるので“ふわっ”とした味に仕上がっていると思いますが。
三波:うーん、なるほど、噛まなくてもスーッと喉に入っていく感覚。まるでクリームのようですね。これは美味しい。もう一つと手が伸びますね。ファンの方がご指名で買っていかれるのがよく分かります。
白井:ありがとうございます。
三波:さて、これからのお品作りとしましては?
白井:はい、温泉大好きの若い方にも、足を止めていただきたいですね。この頃は健康ブームと相まって、和菓子がたいぶ見直されて来ているようですから。
三波:そのようですね。箱根の旅館を訪れてまずお部屋のお菓子を一口、知らずに召し上がったその銘菓の多くはこの福屋さんのものとか。本店は有名な『富士屋ホテル』さんのお隣、ぜひ皆さん、一度のぞいてみて下さい。
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