山々に薄雪が残る寒い甲州に、ポッと一輪梅が咲き出すと春が訪れる。花の季節を終えるとやがて実を付けた小梅は初夏から梅雨にかけて生長し、収穫期を迎える。日本人に愛されてきた梅干しの産地で、確かなこだわりの味に出会えた。
三波:まずは正直に言います。和歌山は知ってても、“小梅”の産地は山梨県だということ、知りませんでした…。
長谷川:いやいや、三波さんだけでなく皆さんそうおっしゃいますよ。しかし実は、山梨小梅は種が小さく果肉が厚い品種を揃えた日本一のブランド商品です。
三波:一般的な梅干と小梅とはどう違うんですか?
長谷川:山梨は盆地の地形が小梅の栽培に最適で、西側と東側にそれぞれ一大産地があります。収穫したものをその日のうちに天然のミネラル塩に漬け、熟成させてから梅雨が明ける頃に天日干しです。甲州盆地の昼夜の大きな温度差を最大限に生かした三日三晩のこの作業で、甘酸っぱい香りが澄んだ空気に漂います。
三波:その光景が目に浮かびますねェ。こちらでは、かなりの量を作っていらっしゃるとか?
長谷川:そりゃもう t (トン)の単位ですよ。カリカリ梅で200t、梅干で300t
ぐらいですか。今ここで干しているだけでも一日5〜6t はあります。
三波:いわゆる“塩梅(あんばい)”というくらいですから、塩加減は特に難しいでしょうね。
長谷川:塩漬けして天日干ししたものは、24%位の塩分ですが、今は市販の物でも減塩に気を遣って7〜8%の製品がほとんどです。ただそうすると、水の中に梅の旨味が逃げてしまいます。そこでうちでは、しょっぱくなくて風味も残る13%というギリギリのラインで製造しております。
三波:主にどんな商品をお作りになっているのでしょう?
長谷川:大別すると“カリカリ梅”と“梅干”です。柔らかくて潰れやすいので、ほとんどの行程が昔ながらの手作業となります。機械はあくまでも補助ですからね。どうぞ食べてみて下さい。
三波:いただきます。うーん…、本当に柔らかくてフルーツ感覚でいただけますね。何と言ってもこの肉厚!
塩加減も非常にマイルドですし、これならいくらでもいただけそうです。ところで、会社名に“醸造”とあるのは元々はお醤油屋さんだったからとか。
長谷川:はい、創業は明治39年です。醤油や味噌を作りながら茄子や大根、小梅の醤油漬けや味噌漬けを作っておりました。梅の持つ体に良い部分をどう残すか、また美味しさの追求と安全性を心掛けて参ります。また、栽培農家あってこその会社ですから、地域に貢献出来る企業でもありたいと思っております。
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